■指先で活字の向きを確かめる
文選工は、指先がとても大事です。なぜなら、小さな活字を一本一本拾って、指先で活字の向きを確かめて作業をしていくからです。
ベテランになると自分が拾った活字をいちいち見たり、ステッキに納めるのにステッキを見たりしません(パソコンのキーボード入力でいうとブラインドタッチのイメージでしょうか)。そんなことをしていたらスピードが遅くなるからです。
視線は常に原稿と次の活字の間を往復しています。活字がひっくり返っていないかは、指先でネッキと呼ばれる溝を触って確かめながら、ステッキに納めていました(縦組みのときはネッキを右に、横組みのときは上に向けて並べていきます)。
冬の寒い日は活字が冷たく、指先が凍えます。指先の皮がすり減って活字の角に当たると飛び上がるほど痛いときがあります。でも、活字は小さいので手袋をはめて拾うことはできません。
そのため、冬はストーブのそばで金属製のステッキを暖めるなど、少しでも作業しやすいように工夫していました。