株式会社吉村印刷

印刷を楽しむブログ

活版印刷を深掘り⑤ ~活字を切らさないための準備~


活字をたくさん拾うと、ケースの中の活字がなくなります。そうすると、次の仕事のために活字を補充する必要があります。活字を切らさないためには、事前に活字の予備を準備しておく必要がありました。

活字を補充する作業のことを「字詰め」といい、具体的には新しい活字をゲラ箱から活字ケースに移していました。全ての活字が均等になくなるわけではないので、均一に補充することはできません。

従って、それぞれの活字をどれくらいの分量で補充用に作っておくかについて、常に注意を払っていました。仕事の内容によって必要な活字やよく使う言葉などは変化するので、その時々に必要となる活字を予測し、事前に※鋳造部に注文していました。
※活字は、鋳造で作製します。吉村印刷では、自社で鋳造機を保有し、活字を作っていました。

鋳造部は、文選部が出した注文に合わせて活字を作ります。しかし、母型(活字の元になる金属製の雌型)を入れ替えたり、位置を微調整するのには時間がかかるので、計画的に活字を作製することが重要でした。

当時は「ストック方式」と呼んでいましたが、一番よく使うひらがなの字やよく使う漢字などを表示をしたゲラ箱を予備としてストックし、空になったゲラ箱を鋳造部に持って行けば、鋳造部が計画的に作るシステムを構築していました。

↑活字をストックしたゲラ箱が並んでいた


1日中活字を拾った後は、空に近くなったケースと字詰めをして満杯になったケースとを入れ替え、いつどんな仕事の注文が来ても即座に対応できるように、活字を切らさない方法をとっていました。現在のオフセットやオンデマンド印刷の仕事にも、この経験は生きています。

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