活版印刷の工程のなかで、文選の次に行うのが植字と呼ばれる工程です。植字とは、字の通り、「文字を植える」すなわち一本一本拾った活字を使って、書籍や新聞などの印刷物を組んでいく工程のことです。
■引き組
活字を組むときは、「植字台」という斜めになった台の上で、手前に引くようにして組んでいたので、「引き組」と呼んでいました。活版印刷は、パソコンと違い、すべて逆さま(逆像)の作業です。ちょうど鏡に映して物を見ているような感じになるので、慣れないうちは勘違いして戸惑うことがありました。
■空白部分を埋める、込めもの「コミ」・「インテル」
活版で印刷した印刷物には文字や写真などが印刷されていますが、文字以外の空白の部分にもインテル※やコミ※と呼ばれる「込めもの」が入っています。
書籍なら、活字を一行並べては行間の空きにインテルを置き、また活字を並べていきます。改行の前には、コミを空き字数分入れます。活字は一本ずつバラバラなので、ちょっと手が当たっただけでもすぐに倒れてしまうので細心の注意が必要でした。
これもパソコンではあり得ないことですが、倒れてしまった活字を起こすときに逆に置いてしまうと、横向きの文字になったり天地(上下)が逆になったりします。もちろんこれらは校正で正されますが、後工程にツケを回すことになってしまうので、一つ一つの工程で正確に作業することが不可欠でした。
※インテル:行間の空き量の調整や版面余白など、広いスペースを埋めるために使う鉛または木製の板上の長いプレート。長さや厚みが異なるインテルが数多くあり、版型に合わせて使い分けていた。
※コミ(クワタ):行末にある空白部分を埋めるために使われる金属製の四角い柱のようなもの。全角、2倍、3倍、4倍、四分、三分、半角などがあり、活字の号数毎に揃えていた。