今回も「活版印刷を深掘り⑩」にひきつづき、活字組版についてです。
現在の電子組版では、アートボード(版面)内を縦横無尽に、自由な太さで線を引くことができます。文字の大きさ、配置も無限に変えることができます。文字間を簡単に詰めることができるし、文字を重ねて加工することもできます。活版では思いつかないような斬新な発想で、組版の可能性は無限大です。
しかし活字時代には、漢字の変換ミスなどはありえませんでしたし、PDF上で文字が勝手に化けてしまうこともありえませんでした。そのようなミスが起こるようになったのも、電子組版の特徴なのかもしれません。活版と電子組版、それぞれの作業に見合った留意点をおさえ、その特徴をつかんで作業することが大切だと実感しています。
活版では、限られた資材でどうすれば最も美しい組版ができるかを考えて作業していました。
例えば、伝票や封筒などに角丸や斜め線を入れるときは、鳥居ばさみと呼ばれる道具を使って罫に切り込みを入れ、曲げて作っていました。
慣れないと四方の角丸がいびつになったり、曲がり具合が微妙に違ったりして大変でした。
そこには、電子組版とは違った活版職人の発想・組版技術があり、より美しく、使いやすいレイアウトセンスを磨いていました。完成したときの充実感もまた大きなものがありました。