活版印刷において、なくてはならないのが「解版」です。
解版とは、読んで字の如く「版を解く」作業です。印刷が終わった組版をバラして、材料ごとにまた使えるようにします。従って、一番最後の作業であると同時に、次の準備をする始まりの作業でもあります。
解版は、根気が必要な仕事です。吉村印刷の場合、本文に使った活字は鋳造して再利用していましたが、それ以外の材料(大きな活字、インテル、罫、コミなど)は、それぞれ元の場所に返していました。
書籍などの頁物は、本文活字が多いため解版が比較的簡単でしたが、コミ(行末の空白部分に入れる込め物)はピンセットで一つ一つ抜いていました。さらに、罫線がたくさん入った伝票を解版するときは、短い罫や長い罫がたくさんあるため時間がかかり、とても大変でした。
活字や罫は、インキが付いたままにしておくと次に使うときに固まってしまうので、どんなに小さくても一つずつウエスで拭かなければなりません。そうしてきれいにしたものを、罫であれば長さと種類ごとに分け、所定のタンスや棚にしまうのです。
活字は大きさごとにゲラ箱に集め、返版作業でそれぞれのケースに戻します。これらを正確にしておかないと、次に組むときに混乱してしまうので責任重大です。
コミも種類別により分けます。コミ選別機という機械で、ある程度は分別していましたが、本文に使う8ポイントや9ポイントの四分、三分、ルビの全角のような小さい物を正確により分けるためには、やはり人間の手が必要でした。
以上、5月から続けてきた「活版印刷を深掘り」シリーズも、⑭「解版」をもって最終回となりました。マニアックな話も多かったですが、いかがだったでしょうか。
最近、活版印刷の独特な風合いや凹凸のある印面が人気を集めています。活版印刷に携わってきた私たちとしては、とてもうれしく感じると同時に、アナログの時代に培ってきた技術・感覚を、これからの印刷現場に活かしていくことが大切だと感じました。 (おわり)