『本のエンドロール』(安藤祐介:著)を読みました。
これは印刷会社・製本会社・出版社を約3年間にわたって取材し、本造りに携わる人々を描いた物語。
「夢は目の前の仕事を毎日、手違いなく終わらせること」
「本を刷るのではなく、本を造るのが私たちの仕事です」
印刷会社で日々営業をおこなう、2人の登場人物の言葉。この相反するように見える言葉が物語のテーマとなっています。
1万部もの製本後に見つかった誤字の原因は、校正がダブルチェックを怠った印刷会社の致命的なミスだった。しかし著者は、本の発行日にこだわり「仕方がない」と告げる…。
「編集者から仕方ない、と言われるのは一番つらい。それが重なると、われわれは信頼を失い、仕事を失うことになる」と己の甘さを恥じる浦本…。
組み版現場、印刷現場で働く私たちにとっても、「物語がどう展開されるのだろうか…」と息の詰まる思いで読んでいきました。
また印刷の専門用語(ゲラ、ノンブル、ヤレ紙など)がところどころに使われており、それぞれの用語のもつ由来や語源も新鮮でした。
この本を通じて「丁寧な仕事で良い本をお客様に届ける」という本造りの原点に触れ、同じ印刷業に携わる者として、とても共感しました。
吉村印刷の社内でも一時期話題となった『本のエンドロール』。これから本を造ろうとしている方、印刷所で働くみなさんにはぜひ読んでいただきたいお薦めの一冊です!!