かまぼこレンズ…。 数十年前、活版印刷時代に使っていたかまぼこ型のレンズのことをそう呼んでいました。
電子組版機(パソコン上の組版ソフト)では、文字を平体や長体にしたり、斜体にしたり…と自由に変形することが出来ます。しかし、アナログの活字ではそうはいきません。
例えば、新聞などでよく見かけるバックに飾りのついた見出し(地紋付き見出し)などは、正方形(正体)であることが珍しいくらい変形しています。活版印刷の時代は、この見出しを凸版(初めの頃は亜鉛版、後には樹脂版)で作っていました。
当時、使っていたのがこの大きな凸レンズや凹レンズです。
活字で印刷した用紙を製版カメラにセットして、かまぼこレンズを使って長体や平体の文字を作ることができます。セットしたフィルムとの距離を微妙に近づけたり離したりして、変形率を調整し必要な寸法を出し、撮影します。まさに人間の手作業の感覚です。そしてそのフィルムを使って凸版を作ります。
後に写真植字機が導入されると、機械の中に変形レンズが組み込まれていて、直接フィルムに変形した文字を印字することができるようになり、かまぼこレンズの出番もなくなりました。