印刷業界では、オフセット印刷やオンデマンド印刷が主流ですが、お客様から「活版印刷で名刺やメッセージカードをつくりたい!」という話をいただくことがあります。
活字を使って作製した名刺はレトロな雰囲気があり、プリンタでは出せない味があると評判を呼び、現在もひそかなブームが続いています。https://www.yoshimurainsatu.co.jp/service/shurui.php
↑活字とステッキ
吉村印刷も、かつては活版印刷が主流の会社でした。活字を自社で鋳造した後採字し、印刷後に※返版していました。ステッキで一字一字活字を拾い版を作製、そこから活版印刷機で何百頁もの分厚い本を作っていた職人の技術は、現在も社内に脈々と受け継がれています。
※返版:自社で鋳造できない活字を再利用するため所定の位置に戻す作業
最近では、漢字を覚えていなくてもパソコンで簡単に変換することができ、スマホを使えば音声でもテキストデータとして取り込むことができるようになりました。しかし活字を拾っていた当時は、部首ごとに活字が大量に並べられていたため、漢字の部首を覚えていないと、鋳造の際や活字ケースへの※字詰め・採字・返版などの作業がスムーズにできませんでした。
当時、部首一覧表を見て一生懸命覚えたおかげで、DTP化が進んだ今でも役に立っていることがたくさんあります。
※字詰め:活字ケースに少なくなった活字を補充すること
作字のこと
人名や地名など、活字がない場合(外字ともいう)は、部首の「へん」や「つくり」を罫削り機で削って、全角1字分に合体する作業=作字をしていました。本文活字でなく、見出しに使う大きな活字は資材屋さんに1本ずつ注文することも。あやまって活字を落としたりすると、メツ(傷が入ること)になり使えなくなるので慎重に扱っていました。
↑見出しに使っていた2号ゴチックの活字
現在吉村印刷では、活字を使って印刷することはなくなりましたが、伝票やチケットなどにナンバーを入れるときには、活版印刷機で印刷しています。古い機械ですが、メンテナンスを定期的におこない、現役で活躍しています。
今でも印刷の展示会や本などで活字やコミ、ゲラ箱、ステッキなどを見ると、とても懐かしくあの頃を思い出します。