ブックデザイナー・名久井直子が訪ねる『紙ものづくりの現場から』(編者/グラフィック社編集部)。『デザインのひきだし』の編集者・津田淳子さんのTwitterを見ていて、この一冊に興味をもちました。
この本は『デザインのひきだし』に連載された「本づくりの匠たち」と「ポップアップ製本記事」をまとめたものです。
活字の鋳造から始まり、活版印刷、美術書の出版を続ける手摺木版出版、カラーコロタイプ印刷、紙をつくる製紙工場、製本紙加工、古紙リサイクルについてが載っていて、最後は『「すごいしかけ」のポップアップ絵本を作る工場』でしめくくられています。
本文1頁ごとに工場見学の旅をする名久井さんのカラー写真が目に飛び込んできます。
■「紙愛」の名久井直子さん
とても印象的なのは、ブックデザイナーである名久井直子さんが工場見学で食いつくように質問し、機械をのぞきこんだり、ついつい紙の臭いを嗅いだり、ロール紙にハグしたりする姿。彼女が本当に紙を愛していることが伝わってきて、名久井さんとお会いしたくなったり、工場現場に足を運んでみたくなりました。
■紙の神様・岡太神社
福井県にある岡太(おかもと)神社は「紙祖神・川上御前」を祀る国内唯一の社だそうです。この本を読んで「紙の神様」があることを初めて知りました。毎日紙を扱っている者としては、いつか岡太神社に詣でて、宮司様のお話を直接聞いてみたいものです。
■“紙づくり”の現場
印刷用紙を製造する国内最大の設備であり、世界最大級のマシン「N6号抄紙機」。
東日本大震災により、日本製紙・石巻工場も壊滅的な打撃をうけました。(この当時の詳細については「紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている」(著者・佐々涼子)に書かれています)
その後完全復旧し、運転再開の日、工場にかけつけた日本製紙グループ本社の芳賀義雄社長は「これで日本製紙は完全によみがえる!」と語ったそうです。
この巨大な「N6号抄紙機」が稼動して迫力ある機械を見上げ、圧倒された名久井さんは一言。「男前のマシンですね!」
彼女のカッコいい一言がとても印象に残りました。