オフセット印刷を行なう場合、紙の同じ位置に印刷されていないと、仕上げ(後加工)段階で絵柄が切れる、体裁が悪いなどのトラブルを起こしてしまいます。印刷機には、見当を合わせるために前見当と横見当があり、紙が前見当に到達した瞬間、引くまたは押して横ずれをなくす役割を担うのが、横見当です。
→印刷・製本の要、針と咥え(くわえ)
今回深掘りしてみる「針」とは、先ほど紹介した横見当の引き針のことです。
印刷会社では、製品によっていろいろな厚さや質感の紙を使います。通常の仕事で使うのは0.05mm~0.3mmぐらいの厚さの紙。ノーカーボン紙、コート紙、上質紙、マット紙、アート紙など、どれも紙の質・厚さが違うので、それぞれの紙に合わせて針の設定を変える必要があります。
印刷機の針の設定は、一般的によく使われるコート90kg、上質70kg(紙厚が0.08mm~0.1mm)を基準にして行なっています。
ここで登場するのが「バネ」です。紙を引くために活躍するバネですが、紙厚が0.1mm以下のときは「弱」を使い、0.1mm以上のときは「強」を使うなど、紙厚によってバネの強さを変えています。
さらに調整ねじを使って締めたり緩めたりすることで、紙に対しての接触圧を変えることができるので、より微妙な調整ができます。この絶妙な調整によって正確な位置への印刷が可能になっています。
針の調整は強すぎても弱すぎてもダメで、弱いと紙を引かない、強いと紙を引きすぎて中で紙が曲がる(もぐる)・跳ね返るなどのトラブルで見当ズレの原因になってしまいます。
新人のときは設定が上手くいかず、とても苦労した記憶があります。設定が終わらなくてなかなか本刷りにいけず、それだけで時間のロスになったということもしばしばでした。
“印刷機の針の調整”。ほんの一部分ですが、どれだけ事前に準備できているかでその日の仕事の効率が変わってきます。「段取り八分」といわれますが、どんな仕事でも事前準備が大切ですよね。