冊子の表紙や見返し、リーフレットや学校要覧などに使われる色上質紙。読んで字のごとく色が付いた上質紙ですが、そのなかには珍しい名前の色があります。
「銀鼠」もその1つ。桃や空、若草など一般的な色に比べてなかなか使われない色ではありますが、灰色系の色として重宝されることもあります。
一言に灰色といっても、その表し方は様々。濃淡で分類するなら明るめの灰色や暗めの灰色、色味で分類するなら赤みがかった灰色や青みがかった灰色など、普段の生活のなかでもたくさんの灰色があります。「銀鼠」はそのような灰色のなかでも「明るい灰色」に分類される色のことを言います。
江戸時代には、「奢侈禁止令(しゃしきんしれい:贅沢を禁止して倹約を推奨・強制するための法令のひとつ)」によって、町人が着ることを許されていた茶系や鼠色系の着物のなかでわずかな色の違いをだして楽しむことが「粋」とされ、いわゆる「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)」ともいわれるように同色系でたくさんの色が生まれたと言い伝えられています。「銀鼠」は、江戸時代のそのような背景の中で生まれ、流行色になった鼠色系の色の1つです。
ちなみに、「四十八茶百鼠」には、他にも梅鼠(うめねず)、鳩羽鼠(はとばねずみ)など微妙な染め分けによる色がたくさん生まれており、銀鼠や利休鼠のように今でもJIS慣用色名に残っている色もあります。
※書籍のイメージは微妙な色の使い方で変化するので、表紙や見返しの色選びは重要です。色上質紙の他にも様々な紙の種類があり、それぞれに個性的な灰色や茶色の紙があるのでぜひ手にとっていただき、色味や手触りの違いを確かめてみてください。