「活版時代の上皿天秤」で少しふれましたが、贅片を折り取って削った後、つまり活字の天地をひっくり返して見ると、溝になっています。
これを印刷すると、下駄で歩いた跡のように見えるので「ゲタ」と呼ばれています。
活版印刷の時代、判読できない文字があったとき、手元に必要な活字がなかったり作字が間に合わないときなど、伏せ字(欠字)といってその場所に余っている活字をひっくりかえして代替文字として入れていました。それを「ゲタを履かせる」と呼んでいました。後で間違いなく差し替えするための目印になるし、きちんと倍数通りの組み版ができるようにするためです。
活字自体が姿を消しつつある現在ですが、パソコン上で「ゲタ」と入力して変換すると、今でも「〓」(ゲタ記号)が表示されます。活版時代の「ゲタ〓」は、パソコン時代でもひっそりと生き残っています。