この道具は、活版印刷を主としていた時代、おもに囲み物などに使う装飾欄を削るのに使っていました。
活版用の飾り欄は、種類によって1~4㎜くらいの厚みがあり、角を直角に合わせるために主として45度の角度を付けて削る必要がありました。
また、欄の模様が角でちょうど合うようにするために削ることもあり、囲む物の長さを決め、削りすぎないように少しずつ慎重な作業を行なっていました。長すぎると突っ張ってしまうので、組み付けたときにちょうどぴったりになるように、角度も長さも正確さが要求される作業でした。
また、活字の偏(へん)と旁(つくり)をつなぎ合わせて作字をする際に、活字を削るのにも活躍しました。
作字をするときは、それぞれの幅が同じくらいの文字を選んで削ります。偏と旁を合わせたときに1字分の幅より大きくても小さくても組むときに正確にはまらないので、大まかに削った後はヤスリで少しずつ調整していました。削っても食い込む部分があるときは、カッターやピンセットでその部分だけを取り除いていきます。
基本的な考え方は、パソコンで作字をするときも同じ。ですが、活字の場合はいったん削ると元に戻せない。削りすぎたときは、初めからやり直さないといけませんでした…。(活版の場合は、小さいと印刷中に飛び出したり、大きいと突っ張って他の活字がずれて印刷できなくなります。パソコンの中で完結する今のデジタル環境とは、違う意味での慎重さが求められていました)