折り機などの機械を操作しているとき、思わぬところでつまづくことがあります。考えられる仮説をたててみて、「こうじゃないか?」と調整してみるもののうまくいかず、予備の紙も少なくなり、焦れば焦るほど時間だけが過ぎていく……。こんな経験は、大なり小なりどこの印刷・製本会社でもあるはずで、とくに自動化されていない古い機械ほど、独特のクセがあったりして難しかったりします。
説明書やガイドには、どのネジで調整するのかという“操作方法”は記載されていますが、具体的な数値やトラブルの解決方法などは書かれていないことがほとんど。紙にエアーを送るブロアの調整でも、風の強さ、紙にあてる角度などは、実際にやってみないと分かりません。機械の調子が悪いのであれこれさわってみた結果、意外とローラの汚れが原因ということもあります。
“製本”と一言でいってもその守備範囲は幅広く、1冊の上製本から数万冊単位の製本、伝票製本から出版関係の雑誌まであらゆる紙媒体の製本があります。
それぞれの冊子や書籍、帳票を作っていく仕事の中身を紐解くだけでも、折り・丁合・綴じ・断裁などの一般的な作業から、表面加工やミシン目加工、ナンバーリングや穴あけ、角切りなどなど、数えきれないほどの作業のなかで、たくさんの作業者が関連していきます。先ほどの折り作業のように見通しが立たないトラブルに直面し、次に控える後工程との関係で頭を悩ませたり、ときには難しい作業と難しい作業に挟まれて納期や品質を保証するために四苦八苦したりすることもありますが、今思えばそれがこの仕事の醍醐味で、窮地の状況を解決することによってこそ、その経験が糧になっている気がしています。
やってみないと分からないことだらけの製本作業。その様々な過程をくぐり抜けて完成した本が本屋に並んでいるのを見ると少し嬉しくなると同時に、「この部分が大変だったな」とか「ちゃんと無事に読んでもらえるかな」とか少し心配してしまうこともあります。読みたい本を探しに行くのではなく、作った本を見に本屋に行くというのは、印刷・製本屋あるあるなのかもしれません。
製本の世界は、終わりのないかなり奥の深い世界ですが、それぞれの製品の経験を糧にしながら、新しいことにもチャレンジしていきたいです。