カラー写真のレタッチ(修整)作業には、カラーマネジメントシステム(CMS)に対応したモニターを使っています。モニターで見る色、校正刷りの紙、最終印刷物のマッチング(色合わせ)を管理するうえで、モニターのキャリブレーションは最初の工程でかかせない作業です。
キャリブレーションとは、「校正」の意味です。モニターは、経時変化により輝度やガンマ値が劣化し、画面に表示される色味が変わってしまいます。経時変化したままのモニターで写真のレタッチ作業をすると、階調が維持されないため※トーンジャンプを起こしたりする場合もあります。また表示画面の色に惑わされた作業により、印刷したときに“色が違う”となってしまうことも。そのため定期的に専用ツールを使って適正値に戻す作業がキャリブレーションです。
※トーンジャンプとは、滑らかなグラデーションの中に急激な濃度の変化が現れること。縞模様が見えてしまうこともある。
常に適正値を保持するため、モニターの使用時間が100時間を超える前にキャリブレーションをするようにしています。
Color Navigatorという専用ソフトで、前回キャリブレーションをしてからの経過時間をチェックし、色彩計をパソコンに接続します。あとはソフトウェアの手順に沿ってキャリブレーションを実行させると、自動で測定と調整をおこない作業が完了します。測定後は、目標値と測定結果について、どれだけ誤差が生じているかの検証をおこないます。
手順は簡単ですが、少し時間がかかるため、忙しい時期には「時間がもったいない」と思うこともあります。しかしトラブルを未然に防ぐため、欠かすわけにはいかない作業です。
ちなみに、最近のモニターはハードウェアキャリブレーション機能が付き、自動で設定した時間帯にキャリブレーションをおこなってくれるようです。
パソコンのモニターの色と、紙に印刷したものの色の違いは、印刷業に携わっていない人でも経験したことがあるのではないでしょうか。色が多少違っても良い場合は問題ありませんが、シビアな印刷を要求される美術印刷などではカラーマネジメントに対応したモニターは必須になってきています。