楮紙とは、その名前のとおり、楮(こうぞ)を原料として紙漉きをした和紙のことです。
寿命が1000年とも言われる和紙の世界。
なかでも楮紙は、もっとも歴史がある紙の一つで、特徴は、繊維が長く、強靱である(丈夫である)こと。そのため古くから長期間の保存が必要な文書などに用いられてきました。
また楮紙のもう一つの特徴として、日本独自の手漉き製法によって形作られてきた繊維質が印象的な和紙独特の風合いがあります。この見た目の風合いのよさと手触りが現在も人気で、多くのシーンで愛用されています。
しかし、この紙にオフセット印刷でインキをのせるとなると、この“繊維が無造作に絡んでいる”風合いが影響し、ローラーやブランケットに繊維が付着し、紙がめくれ上がってしまうなどのトラブルが起きやすく、印刷者泣かせの“大変難しい紙”となってしまいます。
美術和紙の「楮紙」は、本来の風合いを残しつつ、この難点を改善し、“印刷に適した紙”として開発された和紙です。
古くから家庭に伝わる書物(家系図など)などのレプリカの作成をご依頼いただいた際には、あえて本来の印刷面ではなく裏側に印刷をすることでざらざら感を出し、風合いを再現するなどのひと工夫を加えることもあります。
日本の良き伝統を現在に活かした、素敵な紙のひとつです。