株式会社吉村印刷

印刷を楽しむブログ

下関市室津に残る鏝絵

鏝絵(こてえ)とは、漆喰(しっくい)を用いて、左官職人がこて(左官こて)を使って仕上げていくレリーフのこと。
日本各地にこのようにして作られた絵があるようですが、下関市周辺では、豊浦町の室津地区で観ることができるということで、実際に行って写真を撮ってみることにしました。


↑鶴・亀・松竹梅

室津の公民館横には、鳳凰やお城など、いくつかの鏝絵が展示されています。
この鏝絵の由来についても説明がありました。


「室津の鏝絵の由来は、明治時代二度の大火で室津の浦は、殆ど焼け野原に成りその経験を活かし火災に強い家屋を作る為左官さんを探していたそうです。その噂を聞いて島根より石州左官の集団がやってきました。この左官さんたちが、家屋の再建の時、周囲の美観を考えたのか魔除けか又新築を請け負った家人への感謝を込めたものかまたその家の生業の成功の証として作られたか定かではありませんが、もう二度とこの様な災難に、見舞われない様にとの、人々の切実な願いを、鏝絵に託したのではないかと推測されます。
この中の左官職人の一人が後の室津の鏝絵の作者 井沼田 桝市こと富士永桝市です。
室津の鏝絵は、殆ど作風が似ておりこの人の作だと云われています。
現在、この人の存在を知っている人は無く伝説の鏝絵職人と云われています。しかし、作成されてより百数年経ちますが、この人の作品は今なお輝いています。

室津の龍
龍は、雨を呼ぶという事から、【火伏せ】の意味が有り龍を題材にしたものがある。当時の人々は、現在の様に防災設備が無く災害と隣り合わせで生きており二度大火に、見舞われた室津の人々が、二度とこの様な災害が起きない様鏝絵に願いを託した心情が、感じ取ることが出来る。」

ここには、鏝絵が額に入って展示されていましたが、想像以上に細かい作業がおこなわれているのがわかります。絵とはいっても、厚みがあることで立体的になり、よりリアルな印象を受けます。また、鶴と亀のように彩色されているものもあります。


いくつかの鏝絵は、公道から見ることができました。室津地区は、海がすぐ近くにあるので、潮の香を感じながら、探索図を頼りにのどかな民家の中を歩いていきます。

細い路地を入っていくとありました。鮮やかな青がぱっと目に入ります。と、その横にもかわいらしい絵柄があります。


↑↓浦島太郎・牛若丸


↑火消し


↑大黒・恵比寿


↑鶴・亀・月


なまこ壁(防火壁)

拡大してみると、



一見わかりにくいのですが、藤の字が見えます。


↑藤


↑つる花


↑龍

本当に人家の中にあるので、よくよく見てみないとわかりにくいものもありました。狭い路地を何度も往復。通りがかりの人に声をかけて、ようやく見つけたものもありました。「もしかして、これですか」と庭に案内されたのですが、まさに探していたものでした。その方は、「他にも声をかけられたのですが、何かあるのですか」と言われたので、探索図を紹介すると、「地元にこのようなものがあるのですね」と喜ばれていました。

職人さんが込めた願いが何十年もの時を経て、今なお、こうして観ることができるのは、災害にあうことがなかったという証明でもあり、大切にされてきたということでもあるのではないかと感じました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です