丹野智文さんの本に初めて出会ったのは認知症月間のとき。
図書館でふとみかけた『丹野智文 笑顔で生きる』の本を読み、衝撃を受けました。
若くして認知症になったのに、こんなにも前向きに生きている人がいるんだ、と心強く感じたことを覚えています。その後、彼のことを題材にした『オレンジ・ランプ』や『認知症の私から見える社会』を読み、ますます認知症のことに興味を持つようになりました。
そんなとき、日本精神科看護協会山口県支部の創立60周年記念講演として、丹野智文さんの講演があることを知り、今回初めてご本人のお話を聴きに行くことができました。
39歳という若さで若年性アルツハイマー型認知症と診断された丹野さん。
診断された当時は、「アルツハイマー=終わり」というイメージがあり、インターネットで調べても悪い情報ばかりが出てきて、不安と恐怖で毎晩泣いてばかりいたそうです。
現在は重度の顔面麻痺で笑顔を作ることがむずかしいということで、原稿の一言一言をはっきりと大きな声でかみしめながら話してくださり、とても心に響くものがありました。
認知症と聞くと、どうしても「恥ずかしい」とか「一人で大丈夫なのかな」とか考えてしまい、心配だから何もかもやってあげよう、としてしまいがち。しかし「認知症でもできることがある、できる仕事がある」と会社をやめる選択肢をせず、上司に相談したり、自分のやらないといけないことをメモ帳に書いたり、仕事内容をノートに書いたりして、工夫してきたと話されていました。
例えば、道を歩いていても、今自分がどこにいるのか分からなくなるから、不安になって電話をかける、「今どこにいるの?」と聞かれても答えられないから、必ずビデオ電話にして、自分がどこにいるのか周りの景色を映すようにしているそうです。
認知症になったことを悔やむのではなく、「認知症とともに生きる」生き方を選び、活動されています。
認知症は恥ずかしい病気ではない。進行を止めることはできませんが、遅らせることはできます。「認知症だから何もできない」と決めつけて、例えば免許証や携帯など取り上げてしまったり、そうすると当事者はどんどん不安になって下を向き、鬱になってしまうのです。
丹野さんは、好きな営業の仕事や洗車の仕事は諦めましたが、今は認知症についての講演活動や啓発活動をして当事者同士が相談できる場をつくって、少しでもみんなが笑顔になれるように女子会をつくったり…と、聞いていてとても希望を感じました。
「もし自分が認知症になったら…」「もし身近な人が認知症になってしまったら…」
丹野さんの同世代として決して人ごとではありません。
認知症について考えるきっかけを与えてくれた丹野さん、仙台からお越しいだたいて貴重な体験を話してくださり、ありがとうございました。